ラグビーワールドカップ2019日本大会の開幕戦「日本対ロシア」の試合を裁いたのがナイジェル・オーウェンスというレフリー(審判)だ。
ナイジェル・オーウェンスはラグビー界の名物レフリーで、彼の動画がYouTubeにもあるほど有名なレフリーである。
2015年イングランド大会の決勝を裁いたレフリー
ナイジェル・オーウェンス(Nigel Owens)はウェールズ人で、ラグビーワールドカップ2015イングランド大会の決勝、ニュージーランド対オーストラリア戦でも笛を吹いたレフリーだ。あの、日本が強豪南アフリカに勝った時の大会である。
オーウェンスは経験の豊富なレフリーで、選手のみならず、ラグビーファンからも尊敬されている。と同時に、人気のあるレフリーでもある。
ナイジェル・オーウェンスが選手に放った言葉
スコットランドの選手のダイブを注意
ナイジェル・オーウェンスを日本で有名にしたのは、彼が選手に対して発した言葉だろう。それは、前述のイングランド大会のスコットランド対南アフリカの試合で起きた。
スコットランドのスチュアート・ホッグ(Stuart Hogg)選手が、ファールをもらおうとしてダイブ(わざと倒れること)をした。レフリーのオーウェンスはホッグ選手を呼び、下記のように注意した。
There was nothing wrong with [the tackle]. If you want to dive like that again, come back here in two weeks and play, not today. Watch it.
簡単に訳すと「タックルに問題はない。またダイブがしたいなら、今日ではなく、2週間後にここでやれ」ということだ。
ダイブがしたけりゃ、サッカーをやれ
オーウェンスの発言を理解するには、事前にいくつかのことを知っておかなければならない。
まず、スコットランド対南アフリカの試合が行われた場所が「セント・ジェームズ・パーク(St James' Park)」というスタジアムであること。このスタジアムは、サッカーのイングランド・プレミアリーグに属するニューカッスル・ユナイテッドFCのホームスタジアムである。
そして、2週間後、このスタジアムでニューカッスルが試合をするということだ。スコットランド対南アフリカ戦は2015年10月3日に行われ、ニューカッスルの試合は10月18日だったので、正確には2週間後ではなく、15日後ではあるが。
だからオーウェンスは、「せこいダイブは、今日行われているラグビーの試合ではなく、2週間後に行われるサッカーの試合でやれ」と言ったのである。
サッカーサイトでも話題に
ダイブといえばサッカーである。このナイジェル・オーウェンスの注意は、「耳が痛い話」として、日本のサッカー専門サイトでも次のように取り上げられた。
つまり、「ダイブがしたいなら2週間後にここでサッカーの試合が行われるからそこでやりな」という趣旨の発言をしたのだ。これはサッカーに関わる人間にとってはなんとも耳の痛い話かもしれない…。
そして、審判のセンスもなかなかのものである。なお、試合は34-16で南アフリカが勝利している。
もちろん、サッカーにおいても、誰もがダイブをやるわけではない。しかし、ネイマールなどの世界のトップクラスの選手が重要な試合でダイブをし、そのダイブにより得たPK(ペナルティーキック)で試合の行方が左右されることがあるのも事実なのである。
ナイジェル・オーウェンスとホッグ選手の動画
実際に、ナイジェル・オーウェンスがホッグ選手に注意を与えているのが、下記の動画である。
Nigel Owens tells off Scotland's Stuart Hogg for diving
また、ホッグ選手のダイブの場面が次の動画である。
Stuart Hogg brings football to RWC 2015
同性愛に悩んだナイジェル・オーウェンス
ナイジェル・オーウェンスは同性愛者である。そして、自分が同性愛者であることに苦悩し、自殺未遂を起こしたこともあるのだ。この件に関しては、下記の記事に詳細が書かれている。
2007年、彼は同性愛者であることを公表し、苦しみを乗り越えて、ラグビー界で誰もが認めるレフリーの第一人者となったのである。
ラグビーの大きな試合では、各選手のプレーもさることながら、試合をコントロールする審判のレフリングも重要になってくる。ナイジェル・オーウェンスのように、ファンからも選手からも尊敬されるレフリーが注目されるのは当然のことなのかもしれない。