ざきログ

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【ラグビー】ニュージーランド代表が「オールブラックス」とよばれる理由

ラグビーワールドカップでオーストラリアが優勝した年のこと。

あるオーストラリア人とラグビー談義になった時に、ニュージーランド代表は、なぜ「オールブラックス(All Blacks)」という愛称なのかという話になった。

 

 

黒いユニフォームだからオールブラックスじゃないの?

オーストラリアのラグビー事情

下記の記事でも少し書いたが、オーストラリアでは、ラグビーユニオンはそれほど人気はない。単に「ラグビー」といった場合、通常はラグビーリーグの方だと思われる。

 

【参考記事】

www.apriori-eye.com

 

そのような事情を知らずに、オーストラリア人に「オーストラリアってラグビー強いね」と言ってみたが、最初はきょとんとしていたのが印象的だった。

これをきっかけに、ラグビーにはユニオンとリーグの2つがあり、オーストラリアではラグビーリーグの方が人気があること、また、オーストラリアではオージーボールと呼ばれるオーストラリアンフットボールやクリケットが人気があるということなど、オーストラリアでのスポーツ事情を知ったわけである。

 

オールブラックスの名前の由来は?

一方、オーストラリアの近くにあり、南半球でのラグビーのライバル国であるニュージーランドでは、ラグビーといえばラグビーユニオンのことである。

そのオーストラリア人とは、ラグビーのニュージーランド代表の話になった。彼に「ニュージーランド代表は、なぜオールブラックスと言うか知ってる?」と聞かれた。その問いには「ユニフォームが黒いからじゃないの」と答えたが、彼は大笑いをした。

ユニフォームが黒いから「オールブラックス」というのも、あまりにも単純すぎるとは思ったが、「それじゃ、どういう理由?」と聞き返しても、実は彼も知らなかったという落ちである。

 

オールブラックスの由来は黒いユニフォームにあり

オールブラックスという愛称は、黒いユニフォームを着用しているのが由来、というのは話としては面白くない。あまりにもシンプル過ぎるからだ。オールブラックスが試合前に行うハカに関する何か、例えば民族舞踊の踊り手が元々「ブラックス」と呼ばれていたことが由来だったりする方が、歴史的にも面白いはずである。

ところが、オールブラックスの名前の由来を調べてみると、「黒いユニフォームだからオールブラックス」というのは、あながち間違いとも言えないようなのだ。

1892年、ニュージーランド・ラグビー協会(New Zealand Rugby Union)が設立されたが、それまで様々な色が使われていた代表のユニフォームの色を統一した。パンツ(当時はニッカーボッカー)は白であったが、ジャージ(ユニフォームのシャツ)とソックスを黒にした。その後、パンツも黒にした。

しだいにニュージーランド代表は「blacks」や「all blacks」と呼ばれるようになったが、新聞社などのメディアで時折使われるだけで、愛称と呼ぶまでには至らなかった。

考えてみれば、現在でも同じようなものである。あるスポーツチームに関し、メディアは勝手に愛称をつけるが、その愛称が多くの人に受け入れられ、真の愛称と言えるまでには至らないケースが多い。例をあげると、サッカーの浦和レッズである。一部の新聞記者は、同じ赤いユニフォームであるイングランドのマンチェスター・ユナイテッドにちなみ、浦和レッズのことを「赤い悪魔」と称するが、全く受け入れられていない。「blacks」や「all blacks」というのも、このような類だったのだろう。

とは言うものの、「オールブラックス」というニュージーランド代表の愛称は、この頃が起源となる。黒いユニフォームだから「オールブラックス」なのである。

 

愛称の由来のもう1つの説

ニュージーランド代表は、1905年にイギリスに初遠征し、テストマッチ(試合)を行った。そこで見せたニュージーランド代表の戦い方は、イギリス人に衝撃を与えた。チームの全員がバックスの選手のように走り、パス回しをしたからである。

サッカーに例えると、カウンターしか攻撃のオプションがない所へ、華麗なパス回しをするチームが現れたようなものである。

ニュージーランドと南アフリカなどの試合を見ると良く分かるが、南アフリカは力で押す戦いをし、一方のニュージーランドの方は、ランニングとパスで戦うチームである。

この2ヶ国の対戦を日本のチームに当てはめるとするなら、昔の早稲田大学と明治大学ではないだろうか。重戦車と言われた明治は南アフリカで、ラン(走り)とパスワークの早稲田がニュージーランドだ。

イギリスで行われたニュージーランドの試合を見たある新聞記者が、「全てのプレイヤーがバックス」のようなニュージーランドの戦いぶりを「all backs」と評し、それを記事にした。

しかし、印刷をするため活字を組む際に「all backs」とするところを「all blacks」にしてしまうというミスが起きてしまった。このミスからニュージーランド代表はオールブラックスと呼ばれるようになったという説である。

この件ついては資料がないのが残念である。

 

タイポにより広まった「オールブラックス」

現在、新聞社のミスからオールブラックスという愛称が生まれたというのは事実ではないことが分かっている。それ以前からニュージーランド代表はオールブラックスと呼ばれていたからである。

しかし、イギリスの新聞社のタイポ(誤植)が事実なら、オールブラックスという愛称の起源は黒いユニフォームにあるとしても、イギリスの新聞社のミスがきっかけで、オールブラックスという愛称が世界中に広まったとも考えられるだろう。