現在、アムウェイ(Amway)をはじめとするネットワークビジネスは、どのような状況なのだろうか?
IT化が加速されている時代にネットワークビジネスは廃れつつあると予想したが、決してそのような方向に向かっているとはいえないようだ。何かと悪い評判があるにもかかわらず、ネットワークビジネスに関わる人が絶えないということだろう。
それでは、あくまでもビジネスとしてとらえた場合、ネットワークビジネスには魅力があるのだろうか?
ここではアムウェイを例に挙げ、ディストリビューター(distributor)という仕事をビジネスの観点から考察してみたい。
ビジネスとしてのディストリビューター
アムウェイでは「ディストリビューター」になることにより、製品の売り上げに応じたボーナスと呼ばれる報酬を受け取ることができる。
アムウェイの日本法人(日本アムウェイ合同会社)は、売上高などの数値を発表しており、それらのデータを基に、ディストリビューターがビジネスとして魅力があるのかを考えてみる。
1人当たりの売上高
日本アムウェイはウェブサイトの「会員データ集」で、売上高とディストリビューターの数を公表している。2016年のデータから下記の2点が確認できる。
- 売上高…100,471百万円
- ディストリビューターの数…69万組
ディストリビューターの数が「人」ではなく「組」となっているのは、おそらく夫婦で活動している場合もあるからであろう。
売上高をディストリビューターの数で割ると
100,471百万円 ÷ 69万組 = 145,610円/組
となり、1組当たりの売上は145,610円となる。夫婦ではなく1人で活動をしている場合は、1人当たりの売上として差し支えないだろう。
これでディストリビューターのビジネスとしての評価は終了である。
年間1人当たりの売上がわずか145,610円である。これは、あくまでも売上である。報酬がこれよりも増えることはない。この数字を見て、ビジネスとしてアムウェイのディストリビューターを選ぶであろうか?
ちなみにヤクルトレディの平均給与は月額9万円ほどだそうだ。
売上でなく、報酬が9万円である。こりゃ、ヤクルトおばさんの方が夢があるわな。
収入の仕組み
アムウェイのウェブサイトによるとディストリビューターの収入は大きく3つに分かれる。
- 小売利益…売った製品の販売価格と仕入れ価格の差(平均して20〜30%)
- 基本ボーナス…成績別に売り上げの3〜21%が還元
- 別途ボーナス…グループのリーダーシップに対するボーナス
アムウェイのディストリビューターは、よく「権利収入」や「不労所得」と言うので、おそらく小売利益よりは、自分のグループを形成し、アムウェイが規定するボーナスを得ることを目標としているのではないかと推測する。
それでは、ディストリビューターに支払われる報酬は具体的にどの程度なのであろうか?
下記のサイトを参考にすると、売上の28.75%がディストリビューターのボーナスに支払われるようだ。
つまり1人当たりの収入の額は
145,610円 × 28.75% = 41,863円
となる。
ディストリビューターはビジネスとして魅力なし
アムウェイのディストリビューターは、しょっちゅうセミナーなどに出かけ、時間の浪費もさることながら、交通費などもばかにならないだろう。
それでディストリビューターとして得られる1人当たりの平均的な収入が年間で41,863円である。正直言うと、少なくとも0(ゼロ)が2つ足りない。にもかかわらず、アムウェイのディストリビューターにビジネスとしてかかわるのは、頭が弱いとしか言いようがない。
もし「いいビジネスがあるんだけど」と、アムウェイのディストリビューターを紹介する人がいたら、さっさと追い返し、縁を切ることだろう。こんなものを紹介する人にビジネスのセンスがあるとは思えないからだ。
アムウェイ製品買取の広告
ネットでアムウェイについて調べていたら、下記のような広告が表示されるようになった。
おそらくディストリビューターとして、上のランクを狙うか、あるいはランクを維持するため、自分で大量のアムウェイの製品を買い、処分に困ってる人がいるのだろう。
このような広告を目にすると、業者にアムウェイ製品を売るディストリビューターの愚かさを感じるとともに、なぜか哀愁を感じてしまう。
日本の風土にはアムウェイのようなマルチ商法は合わないという嘘
アムウェイのようなネットワークビジネス、あるいはマルチ商法は、アメリカなら上手くいくが、日本の風土に合わないと言われることがある。
これは嘘である。アメリカでも全く問題がないわけではないのである。
海外の掲示板のreddit(レディット)やQ&AサイトであるQuora(クオーラ)には、家族がアムウェイにはまって困っているなんて相談がいくらでもあるのだ。
夫がアムウェイにはまってしまい、離婚をした夫婦の事例もある。
アムウェイの問題点として、洗脳(brainwashing)とカルト性(cultism)があげられる。
Cultism In Amwayという記事の中で、
In the Forbes quote, an Amway executive admits to the problem of cultism.
と、アムウェイ(アメリカのアムウェイ本社であろう)の役員がフォーブス誌に、「アムウェイにはカルト性の問題がある」ことを認めている。
また、アムウェイは詐欺(scam)ともいわれ、下記の記事のように批判も多い。
ディストリビューターが得られる平均年収が4万円程度では「詐欺」と言われてもしょうがないであろう。
マルチ商法やネットワークビジネスにかかわる前に読みたい本
新庄耕著の「」はマルチ商法やネットワークビジネスを題材にした小説である。
ネットワークビジネスの世界について描写が詳細で、著者がネットワークビジネスにはまったことがあるのではないかと思ってしまうほどだ。ネットワークビジネスは、1度甘い汁を吸ったら抜け出せない世界であることを痛感させられる。
友人などにアムウェイなどのネットワークビジネスに誘われたら、1度読んで欲しい本である。