誰もが頭に思い浮かべる競馬とは全く違う競馬が北海道の帯広にある。「ばんえい競馬」がそれである。
普通の競馬なら、競走馬は走り続ける。しかし、ばんえい競馬では、レースの途中、馬が止まってしまうのだ。他にも普通の競馬と異なる点がある。まず、騎手が馬に乗っていない。そして、競争馬は重そうなソリを引き、そのソリの上に騎手が乗っている。
ばんえい競馬の魅力は、力強い使役馬である「ばん馬」が力強さを競うレースということにある。人間も重い荷物を持ち上げる時、気合いを入れるだろう。ばん馬も同様である。重いソリを引く前に気合いを入れるのだ。
ばんえい競馬は普段競馬に興味がない人でも楽しめる競馬だ。そんな、帯広でしか見ることのできない競馬を紹介してみたい。
帯広競馬場で開催されるばんえい競馬
ばんえい競馬は、帯広駅から少し離れた帯広競馬場で開催される。帯広駅からバスが出ているが、歩けない距離でもない。途中「こんな所に競馬場があるのかな…?」と不安になるかもしれないが、大きな道沿いに歩いて行けば帯広競馬場に到着する。
ばんえい競馬のことを「ばんえい十勝」ともいう。
さて、競馬場に到着したら入場料を支払い競馬場の中に入るのだが、入場料は100円(2018年2月現在)と安い上に、数ヶ月間有効のチケットがもらえる。つまり、1度入場料を支払うと数ヶ月は無料で入場できるということだ。もっとも、頻繁に行けるわけもない観光客にとってはあまり意味がないかもしれないが。
この競馬場で気付くことは、家族連れが多いということ。小さな子供も親と一緒に見に来ているのである。まるで家族でサッカーや野球の観戦をしているようで、どこかほのぼのとした雰囲気だ。
もちろん、真剣に馬券を買っている人もいるのだろうが、子供はばん馬を見れるだけで嬉しそうな様子だ。子供を連れた親、あるいはお爺ちゃんやお婆ちゃんはというと、馬券が外れてもにこにこしながら「外れちゃったな~」という具合である。
ばんえい競馬、レース開始
ばんえい競馬は楕円の競馬場ではなく、直線で競われる競馬である。その直線の競争上のゴール裏手にパドックがあり、ばん馬の状態を見ることができる。
ばん馬は農耕馬(使役馬)なので体が大きい。普通の競走馬であるサラブレッドの2倍の体重があるそうだ。それに足が太い。間近で見ると圧迫感を感じるほどである。通常の競走馬が陸上の短距離・中距離走者だとすると、ばん馬はウェイトリフティングの選手のようである。
レースが始まりそうになると、屋内にいた観客が出てくる。階段状の座席で座って見るのもいいのだが、ばん馬が走るコースの近くから見ることもできる。かなりの至近距離であり、ばん馬の迫力を感じることができる。
いざレースが始まると、観客はばん馬とともに移動する。ばん馬は途中止まるが、これがみそである。力をためて、騎手とともに動くタイミングを計るのである。
ばんえい競馬の最大の見せ場は、坂になっている障害である。この坂は2つあり、ここをどうこなすかが勝敗を分ける肝となる。
近くで見ていると、ばん馬の息づかいまで伝わってくるようだ。ばんえい競馬は単なるギャンブルではなく、純粋に競技として楽しめるのではないかと思う。
ばんえい十勝の施設
競馬場内
競馬場内には、ばんえい競馬が初めての人のために「ビギナーコーナー」がある。馬券を買いたい場合は、ここで聞くと買い方を教えてくれる。このビギナーコーナーの右側が馬券売り場になっている。
この他、ばん馬グッズを購入できる売店があり、観戦の記念品を買うことができる。また、出口付近にはばんえい競馬で使用されるソリが展示されている。
とかちむらを楽しむ
ばんえい十勝の敷地には、ばんえい競馬場以外にも飲食店などが並ぶ「とかちむら」や「馬の資料館」がある。ばんえい競馬の観戦の前後に、とかちむらで食事をしたり、馬の資料館でばん馬の歴史について学ぶのもいいだろう。馬の資料館には観光情報センタが併設されているので、ここで十勝の観光情報を得ることもできる。
とかちむらで驚くのは豚丼アイスだ。豚丼とアイスではなく、豚丼風味のアイスである。試しに食べてみようとしたが、今一つ踏み切れず後悔している。再度来る機会があれば、是非食べてみたいアイスである。
この他にも、とかちむら内には「十勝輓馬(ひきうま)神社」という神社もあり、かなり楽しめる施設である。
とかちむらについては、下記のウェブサイトが参考になる。
帯広競馬場の地図
冬のばんえい競馬
ばんえい競馬は冬にも行われる。雪が降って寒くなると、より一層ばん馬の息づかいが感じられるような気がする。
レースとレースの間、観客は建物の中で暖をとっているが、レースが始まる時間になると外に出てくる。さすがに寒いので、他の季節と比べれば人数は少ないが、それでも熱心に写真を撮ったりしている。
冬にばんえい競馬を見に行くメリット
毎年2月の初めの週末に、帯広市では「おびひろ氷まつり」が行われる。この時期にばんえい競馬を見に行くように計画すれば、氷祭りも楽しむことができる。
おびひろ氷まつりでは、氷や雪で作った彫像などが展示されている。また、アイスバーをはじめ、様々な屋台が出店しており、帯広のみならず北海道の名物の味を手軽に楽しむことができる。
十勝川温泉のファンタジックショー「彩凛華(さいりんか)」
冬にばんえい競馬を見に帯広に行くなら、隣町の音更町にも行ってみるといいだろう。
帯広駅前から十勝川温泉行きのバスに乗り、「第一ホテル」で降車する。バス停はホテルの真ん前だ。
降車した第一ホテルのバス停から十勝川の方へ歩いて行くと、白鳥の飛来地がある。地元の人によるとだいぶ数が減っているらしいが、白鳥とカモの姿を見ることができる。
白鳥飛来地では基本的に餌やりは禁止だが、ここでは餌置き場があり、そこから餌を取って白鳥やカモに与えることができる。ただし、餌置き場から餌を取るのは1人1回なので、餌をたくさんやりたいなら食パンなどを持参するといいだろう。
また、十勝温泉では1月下旬から1ヶ月ほど、「彩凛華」というイベントが行われる。別名「白鳥まつり」といわれるイベントは、光と音のファンタジックショーをはじめ、様々な催しが企画されている。
旅行時期を上手く調整すれば、1度にいろいろなことが楽しめるのが冬の帯広の魅力である。
【帯広のソウルフード】豚丼 vs インデアンカレー
帯広名物、豚丼のうまさ
帯広の名物といえば豚丼である。炭火で焼いた豚肉をご飯の上に乗せた丼ものだが、豚肉にからんだタレが絶妙で、とても美味しい。
豚丼で有名な店は何点かあるが、旅行者が行きやすい豚丼の店は帯広駅周辺にある店だろう。帯広駅から近い店は2店ある。
1つ目が「豚丼のぱんちょう」である。昼時ともなるとぱんちょうの店の前には行列ができることもあるので、早めに行くか、あるいは時間をずらして遅めに行くのがいいだろう。
そして、帯広駅構内にある「豚丼のぶたはげ」。店内は狭く、座席数も少ないが、こちらも美味しい。ぶたはげでは豚肉の数の選択肢が多い。
一見、牛丼屋などのファストフードの店のようだが、注文後に豚肉を炙るので、少々時間がかかる。また、持ち帰りの豚丼弁当にも対応している。
豚丼に待ったをかけるインデアンカレー
旅行者にとっての帯広名物は豚丼かもしれない。それでは、帯広市民にとっても豚丼は自慢のできるソウルフードなのであろうか?
「豚丼は帯広のソウルフード」ということに異を唱える人もいる。このような人たちにとっては、インデアンカレーこそが帯広のソウルフードなのである。
実際にインデアンカレーを食べてみると、まあ美味しい。美味しいことは美味しいのだが、カレーはどこでも食べることができる。最初に帯広の豚丼を食べた時の衝撃には程遠い感じがする。
しかし、いろいろ調べてみると、インデアンカレーは多くの帯広の人たちから支持されていることが分かる。
各種大会、イベント、会合等には鍋ごとお届。カレーショップインデアン | 一番おいしいのは妻と母の料理だから帯広で2番目においしい店
地産地消の朝食が自慢のホテル日航ノースランド帯広
帯広で宿泊する場合、おすすめなのがホテル日航ノースランド帯広だ。
ホテル日航ノースランド帯広は、バスターミナルとは反対側ではあるが、帯広駅の前にあるという立地に優れたホテルである。時期によっては日航ブランドのホテルとは思えないほど安い料金で宿泊できる。
安く宿泊できるからといっても、さすがにオークラ・ニッコー系のホテル、利用客に対する従業員の態度は丁寧で、居心地の良さを感じる。帯広に滞在するなら是非おすすめしたいホテルの1つである。
客室は普通のオークラ・ニッコーホテルの仕様で、ビジネスホテルの上位版といった感じである。
ぱっと見、部屋は落ち着いた感じの色合いでまとめられており、ゆっくりとくつろげる雰囲気。掛布団の色も部屋にマッチしている。
ホテル日航ノースランド帯広の朝食は地産地消をうたい文句に、主に十勝地方で作られる食物を使用している。ビュッフェスタイルの食事だが、それほど種類が豊富ではなく、少しずつ取れば全種類食べられるかもしれない。しかし、味の方はしっかりしている。それに野菜がおいしい。特に十勝のじゃがいもで作ったポテトサラダがおすすめだ。
しかし、朝食で何よりも嬉しいのは、豚丼用のタレがついた豚肉が用意されていることである。これを白米に乗せれば豚丼の出来上がりというわけだ。有名店の味にはかなわないとしても、十分満足のいく味である。
帯広での最後の食事に豚丼を食べられるのは嬉しい。もしホテル日航ノースランド帯広に宿泊するなら朝食付きのプランをおすすめしたい。