山口県岩国市にある錦帯橋は日本三名橋の1つである。
錦川に架かる木造の橋の曲線美は、何ともいえない素晴らしさである。また、錦帯橋周辺の環境がいい。川面に映る木々や山が美しく、橋からは山の上に佇む岩国城を眺めることができるという景観である。
そんな美しい錦帯橋であるが、橋を渡るとソフトクリームをめぐり、熱いバトルが繰り広げられている。
岩国へ来たら岩国寿司を
バス停も兼ねる橋の駅
ツアーを利用する場合を除き、錦帯橋を訪れるほとんどの人が岩国錦帯橋空港や岩国駅と錦帯橋を結ぶバスを利用すると思う。錦帯橋の最寄りのバス停で降りると、近くに橋の駅がある。
また、橋の駅は、岩国駅や岩国空港方面へ向かうバスに乗車する際のバス停としての役割もある。
錦帯橋を一望できる展望市場
橋の駅は屋上が展望台になっており、錦帯橋を上から眺めることができる。また、2階には土産物を売っている展望市場がある。
展望市場はちょっとした食堂も兼ねており、食事を取ることもできる。食事をする予定で店が決まってないなら、展望市場もおすすめだ。
展望市場で食事を取るなら、窓際のカウンター席に座るといいだろう。錦帯橋を一望できるからである。錦帯橋を眺めながら食事をするという贅沢なひと時を過ごすことができる。
酒のつまみにもなる岩国寿司
岩国といえば岩国寿司。ここでは岩国寿司を注文してみよう。
見た目は子供が食べるような寿司で敬遠したくなるが、実際に食べてみると味も食感も見た目とは全く異なる。決して子供用の寿司ではないことが分かるはずだ。
酒の肴にしてもいいような押し寿司である。
錦帯橋を渡る
橋を渡る際は入橋料を支払う
錦帯橋を渡るには、料金所で入橋料を支払う必要がある。入橋料は錦帯橋の維持や保全のために使われるようだ。
入橋料を支払うと、錦帯橋を一往復できる。
錦帯橋は思ったよりも傾斜があり、歩きにくい所もある。橋を渡る際は、運動靴のような歩きやすい靴を履いた方がいいだろう。
夜は夜間料金箱へ
錦帯橋は24時間渡ることができるが、夜は料金所に人がいない。その代わりに夜間料金箱が設けられているので、入橋料を箱の中に入れて渡ることになる。
ただし、夜間に岩国城のある方に行っても暗いし、何もない。
錦帯橋を渡ると、そこはソフトクリーム激戦区だった
岩国は剣豪・佐々木小次郎のゆかりの地
錦帯橋の近くには佐々木小次郎のブロンズ像がある。また、錦帯橋の下を流れる錦川の川岸には、小次郎が剣の稽古に使用したとされる柳の木もある。
佐々木小次郎の出生地は不明であるが、吉川英治の小説「宮本武蔵」では岩国とされているのだ。
そんなわけで、岩国は佐々木小次郎と全く縁がないというわけではないことが分かる。
佐々木屋小次郎商店
佐々木小次郎と縁のある岩国である。佐々木小次郎を彷彿させる佐々木屋小次郎商店という名前の店があっても不思議ではない。
勘違いしやすいが、店の名前は「佐々木屋小次郎商店」であって、「佐々木小次郎商店」ではない。この小次郎商店は、この界隈では老舗だそうである。
小次郎商店は食事処としていろいろな飲食物を扱っているが、ソフトクリームを前面に出した戦略をとっている。
店先に並ぶソフトクリームのサンプルから察するに、販売しているソフトクリームの種類はかなり多く、インスタ映えしそうな店構えになっている。
小次郎に挑むむさし
小次郎商店の店先に並ぶソフトクリームのサンプルもインパクトはあるが、実は、錦帯橋を渡って最初に目にするのは「日本一ソフトクリーム100種類」という派手な看板である。
この「100」という数字が重要なのである。スーパーのように「98」という数字ではだめなのだ。また「102」などという半端な数字でもだめなのである。
やはり、ここはどうしても「100」なのだ。実際は写真の上にあるように、ソフトクリームの種類は100を超えているのだが、ゼロが2つ並ぶインパクトが重要なのである。
このお店は「ソフトクリーム100種類」という謳い文句に目が奪われてしまうが、よく見てみると店名がかなり挑戦的なことに気付く。
「むさし」という名前だ。
錦帯橋のある岩国が、少なからず佐々木小次郎と縁があることを思えば、この「むさし」という名前が、非常に挑戦的な名前であることが分かるだろう。
佐々木小次郎の町・岩国で武蔵を名乗っているのである。いい度胸ではないか。
むさしも小次郎商店同様、食事処として他の食品も扱っているが、店構えからして、ソフトクリームに最も力を入れているようだ。むさしはアウェイの地で、小次郎に真っ向勝負を仕掛けているのだ。
しかし、むさしの経営者は周りから白い目で見られているのではないかと想像してしまう。精神的にタフでないと錦帯橋の近くで、むさしという店名ではやって行けないだろう。
むさしと小次郎、勝負の行方は?
見えない火花を感じる、ソフトクリームをめぐる錦帯橋での戦いだが、勝負の行方はどうなるのであろうか?巌流島の戦いと同じく、むさしが勝つのだろうか?
ソフトクリームの戦場でしばらく観察してみると、人の流れは錦帯橋により近いむさしで一旦止まってしまう。あの強烈な黄色地の看板に観光客は引かれていくようだ。このような状況を目にすると、「小次郎の方が落着いた良い店なのに」と思ってしまう。
実は、むさしと小次郎の経営者は実の兄弟とか親戚同士ではないかとも疑ってもいる。
錦帯橋を観光地として盛り上げるために、わざと観光客の目を引くことをやっているのではないかと思うのである。そうでなければ商売上だけではなく、私生活でもぎすぎすしそうだ。しかし、これはあくまでも想像であって、実のところは分からない。
むさしと小次郎の店員が、お互いどう思っているのかというのも非常に興味深いところだ。道端ですれ違った時など、喧嘩でも始めてしまいそうだ。まあ、そんなことはないだろうが。
時代を変え、武蔵と小次郎の戦いが今なお続く錦帯橋ではあるが、個人的には小次郎の町だけに、少しだけ小次郎の方を応援したくなってしまうのも事実である。