経営状態が「まずい」ということで有名な銚子電鉄は、様々なアイデアで困難を乗り切っているローカルな鉄道会社である。銚子電鉄で旅をすると、随所随所にそのアイデアを見ることができる。
銚子電鉄を利用した場合、最高の観光スポットは、銚子電鉄終点駅の外川だろう。決してメジャーな観光地とは言えないかもしれないが、外川はノスタルジーを感じる古い港町である。
レトロな銚子電鉄
銚子電鉄の乗り方
銚子電鉄の駅のホームはJR銚子駅の改札内にある。そのため、銚子駅から銚子電鉄に乗る場合は、1度JRの改札口を通らなくてはならない。JRの切符を買う必要はなく、改札口で銚子電鉄に乗る旨を伝えると、JRの駅員は「どうぞ」と言い、改札を通してくれる。
銚子電鉄の乗車券は、乗車後に車掌が来るので、その時に購入する。
銚子電鉄は、通常の車両以外に「金太郎ホーム号」のような特別車両も運行している。
金太郎ホーム号の正式名称は「金太郎ホーム号 大正ロマン電車」といい、名前の通り大正ロマンを感じるレトロな雰囲気の装飾である。
また、竹久夢二のような大正ロマン風の絵画や古い広告が車内を飾っているのも特徴的だ。
車内でおすすめの座席
銚子電鉄の1番おすすめの座席は、運転席の後ろの座席だ。下の写真のような眺望が楽しめる。銚子駅では早めに乗車し、座席を確保しよう。
1日乗車券がお得
銚子電鉄を利用するなら弧廻手形という1日乗車券がお得だ。単純に銚子駅から外川駅を往復するだけでも1日乗車券の方が安上がりである。また、1日乗車券を購入すると、銚子電鉄沿線の飲食店や土産物店で割引や各種サービスを受けられるという特典も付いてくる。
倒産を回避した銚子電鉄
かつて銚子電鉄は経営危機に落ち入り、倒産寸前であった。副業で始めたぬれ煎餅の販売も、資金繰りに必要とされる現金と比較したら焼け石に水だった。
銚子電鉄の経営危機の回避の話は、下記の銚子電鉄のウェブサイトに詳しく書いてある。
ここには、次のように書かれている。
資金繰りがいよいよ逼迫し、今月の給料がもう払えないところまで追いつめられた時、再び奇跡が起きたのでした。それは、当時の経理課長・山﨑勝哉(現・専務取締役)が電車の運行維持のため必死で考えた「ぬれ煎餅買ってください。電車修理代を稼がなくちゃいけないんです」という異例のお願い文に端を発した、再度のぬれ煎餅ブームでした。
横領事件後に代表取締役に就任した小川文雄(故人)、労働組合委員長・常陸谷恭弘の連名による緊急要請の冒頭文として、公式サイトにこの一文が掲載されるや否や、全国から銚電オンライン・ショップに一万五千件もの注文が殺到し、これを契機として運行維持への弾みがつき、最終的に倒産の危機を回避することができたのでした。
要約すると、倒産寸前の時に、銚子電鉄を助けようと多くの人がぬれ煎餅を買ったのである。そして、結果的に、これが銚子電鉄を倒産の危機から救ったのだ。そのため、銚子電鉄のぬれ煎餅は、「奇跡のぬれ煎餅」とも言われている。
銚子電鉄に関しては、「崖っぷち銚子電鉄 なんでもありの生存戦略」という書籍がある。興味があれば、一読をおすすめする。
犬吠駅でまずい棒とぬれ煎餅を
観光目的で銚子電鉄に乗る者のほとんどが終点・外川駅の1つ手前の犬吠駅で途中下車する。そこに銚子電鉄の売店があるからである。
おしゃれな犬吠駅
犬吠駅のホームは、白を基調としたおしゃれなホームだ。どこか南欧の田舎の駅のような雰囲気が漂い、青空によく映えるデザインになっている。
待合室や売店がある駅舎の方も、すっきりとした外観の建物だ。
鳥居のない神社・まずえもん神社
犬吠駅には「まずえもん神社」がある。まずえもん神社は、後述する、まずい棒販売50万本突破を記念して作られたものだ。そこには漫画家・日野日出志がデザインした、白い「まずえもん(魔図衛門)」という名前の人形が置かれている。
まずえもん神社には鳥居がない。そのため、後ろの壁に苗字が「鳥居」という銚子電鉄の社員の写真を貼っている。念願の鳥居を作れるのかが今後の課題だろう。
まずえもん神社には絵馬もあり、1つ500円で販売されている。絵馬にはまずえもんのイラストが描かれている。
奇跡のぬれ煎餅
犬吠駅には土産物や銚子電鉄のグッズを売る売店があるが、ここで最も人気があるのが銚子電鉄を倒産から救ったぬれ煎餅だ。ぬれ煎餅は人によって好き嫌いが分かれるかもしれない。
食べてみると分かるが、銚子電鉄のぬれ煎餅はスーパーで売っているぬれ煎餅とは別物である。とてもおいしいので、ぬれ煎餅好きなら買っておいて損はないだろう。
日野日出志がパッケージをデザインした「まずい棒」
「ぬれ煎餅」と並び人気なのが、「うまいん棒」のようなお菓子、「まずい棒」だろう。パッケージのデザインは、もちろん日野日出志だ。
まずい棒の「まずい」は経営が「まずい」のであって、決して味がまずいわけではない。
銚子電鉄の名物・たい焼き
犬吠駅の外にはたい焼き屋がある。銚子電鉄の名物である。たい焼きの方は、さすがに暑い日には食べる気にならなが、フラッペのような冷たいドリンクも売っている。
たい焼き屋の前にはたい焼きの形をした路標がある。かわいいデザインで面白い。
坂の町・外川
銚子電鉄終点の外川駅
外川駅で電車を降りると「ありがとう とかわ」と書かれた駅名標がある。なぜか「ありがとう」を意味するタイ語も書かれている。
外川駅の駅舎はノスタルジックな古い建物で、赤いポストとの配置がいい。この赤いポストは「ありがとうポスト」といい、ポストの下部にも「ありがとう」の文字が見える。
外川駅を出ると古い車両がある。この古い車両は銚電昭和ノスタルジー館といい、中を見学することができる。
港町・外川を散策
銚子電鉄で外川駅まで来て、次の外川駅発の電車で帰ってしまう人たちも少なからずいる。非常にもったいないと思う。外川駅の前の道を少し歩いただけで海が見えるのに。
外川は坂の町である。そこがまたノスタルジックを感じさせるのだ。是非、外川の街を歩き、海と坂の織り成す古い港町の風景を楽しんでほしい。
撮影スポットのある本浦通り
外川にはインスタ映えする場所として推されている通りがある。それが本浦通りである。本浦通りは、食事時にお世話になるかもしれない「金兵衛食堂」さんの近くにある通りだ。
本浦通りを始めとする外川の細い通りは、現在のところ、通りの名称がGoogle Mapに表示されないので注意が必要だ。
本浦通りを海に向かって歩いて行くと「”銚子百選”撮影ポイント」と書かれた路標がある。
本浦通りの何がすごいかというと、坂道が関係するせいか、屋根が目の高さになっているところだろう。民家がこのように建てられるのも珍しいのではないだろうか。
撮影ポイントから海に向かった風景は、下の写真のようになる。インスタ映えする写真なら、屋根の低さを強調する写真がいいかもしれない。
目指せ、屏風ヶ浦
外川の観光を終えたら銚子電鉄で銚子駅に戻ってもいいが、まだまだ歩けるというのなら屏風ヶ浦を目指すのもいいだろう。
屏風ヶ浦は「東洋のドーバー」と呼ばれ、表出した地層を見ることができる。屏風ヶ浦には遊歩道があり、むき出した地層を間近で見ることができる。近くで見る荒々しい地形は、かなりの迫力である。
外川の本浦通りから屏風ヶ浦の遊歩道までは2Kmほどだ。外川から屏風ヶ浦まで行くのなら、できるだけ海沿いの道を歩くことをおすすめする。犬岩などの見所があるからだ。
屏風ヶ浦から銚子駅に戻るには、外川までUターンするのもいいが、遊歩道から200〜300mの所に千葉科学大学がある。その正門前から銚子駅行きのバスに乗ることができるので、こちらの方が便利である。
銚子電鉄のウェブサイト
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