イタリアが好きな人はもちろんのこと、そうでない人もヴェネツィアのカーニバルの写真を見たことがある人は多いのではないだろうか。魅惑的な仮面と独特な衣装で仮装した人々がヴェネツィアの街を歩く姿は印象的な光景である。
宗教的な背景を除けば、ヴェネツィアのカーニバルはコスプレのイベントに近い。センスのいい仮装者の周りにはカメラを持った人々が群がり、コスプレイヤーにとっては至福の時かもしれない。
ヴェネツィアのカーニバルが通常のコスプレのイベントと大きく異なる点は、仮装者が若い人だけではないことだ。年齢が高い方も変身を楽しんでいるのである。中にはものすごく気合の入ったおばあちゃんもいる。
このようなヨーロッパのコスプレ祭り、ヴェネツィアのカーニバルの楽しみ方と注意する点などを紹介してみたい。
- カーニバルの中心はサン・マルコ広場とその周辺
- カーニバルにはいつ行くべきか?
- カーニバルの時期にヴェネツィアに訪れる際に注意したい点
- ヴェネツィアカーニバルの人々
- 閑静な一角にあるホテル カ・ズスト・ベネチア
- ヴェネツィアの魅力
カーニバルの中心はサン・マルコ広場とその周辺
ヴェネツィアのカーニバルの中心はサン・マルコ広場である。カーニバルの期間中、ここで様々なイベントが行われる。カーニバル期間中に行われるイベントのスケジュールは、下記のウェブサイトで確認できる(英語)。
Home - Carnevale di Venezia 2019 - sito ufficiale
しかし、イベントは雨やアクア・アルタ(後述する)で中止になったり、延期になったりする場合もある。カーニバルでメインとなるイベントがあるが、これらのイベントをどうしても見たいという人以外は、イベントのスケジュールはあまり気にしない方がいい。
カーニバルが目的の観光客は、とりあえずサン・マルコ広場に集まる。ここには仮装した人達が大勢いて、気軽に撮影に応じてくれる。サン・マルコ広場がカーニバルの中心ではあるが、ここに留まっていてはいけない。
サン・マルコ広場に常駐のコスプレイヤーもいるが、仮装した人達はヴェネチアの様々な場所にいる。それ程人通りの多くない橋の上で、センスのいい仮装者を見つけたりすると結構嬉しいものだ。
おすすめは、サン・マルコ広場から細い路地を散策しながらも、定期的にサン・マルコ広場に戻ってみることである。新たな仮装者を見つけることができるであろう。
カーニバルにはいつ行くべきか?
ヴェネツィアのカーニバルは、3週間弱にわたって開催される。かなり長期間のお祭りであるので、旅行のプランは立てやすい。カーニバルの期間中、自分のスケジュールに合う日に行けばよいだけ。
カーニバルでは、水上パレード(ゴンドラで運河をパレードする)など、いくつかの大きなイベントがある。どうしても見たいイベントがある場合は、事前にいつ行われるかを調べ、イベントがある日にヴェネツィアに滞在できるような日程を決めればよい。
ただし、週末に行く場合は非常に混雑することを覚悟しなければならない。
ヴェネツィアはヨーロッパの各都市から飛行機で1~2時間で行けるので、週末はヨーロッパ各地から観光客がどっと押し寄せる。中には仮装したまま飛行機に乗る人もいるくらい気軽にヴェネツィアにやって来る。
下の写真はカーニバル期間中の土曜日に撮影したもので、サン・マルコ広場のすぐ隣にあるサン・マルコ小広場の様子である。撮影した時間は約午後5時30分くらいだ。
パッと見る限り、「アジアの喧騒」なんて言葉が頭に浮かんできてしまう程の混雑である。それでもサン・マルコ広場やサン・マルコ小広場はまだいい。空間的に広いので、一応は人は流れて行くからだ。
大変なのはサン・マルコ広場からリアルト橋など他の場所へ移動する時である。ヴェネツィアは細い路地が多いので、歩くのに一苦労である。特に橋周辺では、なかなか前に進むことができない。
カーニバルの期間中、サン・マルコ広場からヴェネツィアを散策しながらホテルに帰ろうとした日があったが、混雑のため途中で歩くのを諦めた。そして、近くのステーションからヴァポレットに乗ってホテルに帰ったものである。
週末は混雑の激しいカーニバルではあるが、さすがに平日はここまで混雑はしない。もちろん人が多い方がカーニバルは盛り上がる。混雑を覚悟で週末にするか、それとも混雑は避けて平日にするかはお好み次第である。
カーニバルの時期にヴェネツィアに訪れる際に注意したい点
ホテルの予約について
カーニバルの時期には、できるだけ早くホテルの予約をした方がいい。この時期、ヴェネツィアのホテルは値上がりするが、早めの予約に予約すれば比較的安価なプランでホテルを予約できる。
「もっと待てば、安くなるかもしれない」と思っても、カーニバルが近づけば近づくほど、確実に宿泊費は高くなる。もちろん、時には掘り出し物のホテルが出てくるので、とりあえずはキャンセル無料のプランで予約するのもいい。
カーニバルを1日だけ楽しみたいという場合は、ヴェネツィアの島部(潟)ではなく、「メストレ」と呼ばれる本土にあるホテルに宿泊するのもいいと思う。メストレにあるホテルは、島部にあるホテルと比較すると、かなりリーズナブルである。
また、周辺の諸都市からの日帰り旅行も可能である。フィレンツェやミラノからなら、特急で片道3時間もかからないので、カーニバルを楽しむには十分であろう。
雨対策
カーニバルが行われる頃のヴェネツィアは、雨が降りやすい時期だ。大雨が続くということはないものの、小雨がじとじとと降ることが多い。
また、晴れ間が見えても数時間後には雨になることもしばしばである。
ということで、ヴェネツィアのカーニバルには雨具が必須だ。傘はもちろんだが、ポンチョか雨合羽を用意しておいた方がいいだろう。ヴェネツィアの細い路地では傘が邪魔になることも多いからである。
アクア・アルタ対策
注意を払わなければならないのはアクア・アルタだ。アクア・アルタとは、海面の上昇によって陸地部分に海水が浸水すること、要は洪水のようなものである。
カーニバルの時期はアクア・アルタが起こりやすい。アクア・アルタによってサン・マルコ広場に水溜りができることがある。水溜りといっても避けて通れる小さなものではない。広場のかなりの部分に海水が浸水するのである。
ヴェネツィア滞在中、1度遭遇したが、深い所では15cm以上は水が溜まっており、とても歩ける状態ではなかった。
このような日には、サン・マルコ広場周辺の土産屋で靴の上から履くことができる簡易のレインシューズを売るのだが、これが非常に高い。すぐ壊れそうな作りなのに10ユーロもするのである。実際、1日で破れてしまった。
しかし、この簡易レインシューズがなければ、ヴァポレットでサン・マルコ広場に着いてから広場を通り抜けることができないのだから背に腹は代えられぬということで買わざるを得ないのだ。ちなみに、サン・マルコ広場から路地に入った土産屋では7ユーロで売っていた。
レインシューズがない場合、下の写真のようにしてサン・マルコ広場を通り抜けなければならないので、ちょっと悲惨である。 鉄柵を利用して奥から手前まで移動しているのである。
サン・マルコ広場でしょぼい簡易型レインシューズを買う羽目にならないためにも、日本を発つ前に、あらかじめレインシューズを用意しておいた方がいいだろう。
レインシューズといっても、魚河岸で働く人が履くような典型的な長靴ではなく、履いた際に上の部分を締めることができるタイプのものがおすすめである。雨が降った場合、雨の侵入を塞いでくれるからである。
今ではコンパクトにたためるレインシューズも販売されているので、ヴェネツィアのカーニバルに行くと決めたら購入しておくべきである。
また、上記「雨対策」でも書いたように、この時期のヴェネツィアの天候は不安定で、雨が降ったりやんだりすることが多い。朝起きて外を見ると快晴でも、朝食後は曇ってしまい、その数時間後に雨が降ったりする。常に雨が降ることを想定して準備をしておいた方がいいので、レインシューズがあれば便利である。
また、ヴェネツィアの道は石畳が多く、石と石の間に水が溜まりやすい。そのため、雨が降った後、長時間歩くと水が靴に浸み込んでしまう場合もある。こんな時にもレインシューズは重宝する。
カメラを持つ人へ
上述のように、カーニバルの時期のヴェネツィアは天気が不安定で、雨が多い。このような時にカメラを使用すると、どんなに注意していてもレンズに水滴が付いてしまいがちである。
カメラを携行する際に、簡易のレンズクリーナーを持って行くべきではあるが、レンズクリーナーではレンズに付いた水滴を拭くことができない。このような場合に備えてポケットティッシュを持って行くといいだろう。軽く押し当てて水滴を取るだけなら、レンズを傷つけることもない。
ヴェネツィアカーニバルの人々
カーニバルで人気のある仮装者は、仮面や衣装がとても独創的だ。このような仮装者にはカメラを持った観光客が群がる。
しかし、最も観光客に興味を惹かれる仮装者は、仮面や衣装だけではなく、例えば手の仕草やポーズの取り方などが非常に魅力的で、幻想的な雰囲気を醸し出している。仮面を被っているため顔で表情を作れないので、手や体の動きなどで表情を表現しなければならないのだろう。
これができる仮装者は、本当に周りに独特の空気を作り、ずっと見ていても飽きないものである。
ヴェネツィアのカーニバルには様々な仮装者がいる。
冒頭にも書いた通り、若い人だけではなく気合の入ったおばあちゃんもいるのだ。また、衣装に相当にお金が欠けているのではないかと思われる仮装者もいる。
魅力的な仮装をしている人々は、この他にもたくさんいて、とても楽しいカーニバルである。
YouTubeでもカーニバルを様子を撮影した映像を見ることができるので参考に。
基本的に仮装をしている人の写真を撮ってもチップなど必要ない。しかし数は少ないが、一緒に写真を撮ってチップを要求する者もいる。これは商売としての仮装なので、要注意である。
閑静な一角にあるホテル カ・ズスト・ベネチア
ヴェネツィアのホテルは、全般的に宿泊費が少々高めである。ホテルの数は多いので選択肢は豊富なのだが、リーズナブルなお値段のホテルを見つけても、場所が悪かったり、部屋が驚くほど狭かったりする。
頭を悩ませるヴェネツィアのホテル選びだが、ヴェネツィアは世界有数の人気のある観光地である。ある程度はお金がかかるものと割り切った方がいい。
特にカーニバルの期間中は驚くほど宿泊料金が跳ね上がる。サン・マルコ広場近くのホテルだと狭い部屋が20,000円前後になることもあるのだ。
カーニバルの中心で便利だからという理由でサン・マルコ広場周辺のホテルにこだわる必要はない。ヴァポレットを利用すればサン・マルコ広場へ行くのも不便とはいえないからである。
いろいろとヴェネツィアのホテルを調べている内に見つけたホテルが「カ・ズスト・ベネチア(Hotel Ca Zusto Venezia)」である。このおしゃれなプチホテル、カ・ズスト・ベネチアを紹介したいと思う。
便利な立地。ヴァポレットのステーションからすぐ
ヴァポレット(Vaporetto)とは、車の出入りができないヴェネツィアでの主要交通機関となる水上バスである。カ・ズスト・ベネチアは、1番のヴァポレットを利用し、ローマ広場からは2つ目、サンタ・ルチア駅前からは次のステーションとなる「Riva de Biasio」の近くにあるホテルである。
この手のプチホテルは分かりにくい場所にあるものだが、このホテルにたどり着くのは簡単である。
Riva de Biasioのステーションの前の道を左の方に歩くと行き止まりになるので、そこを右に曲がる。その道をちょっと歩けば右側にホテルがある。Riva de Biasioからは徒歩2分程の距離で、観光の際、ヴァポレットを利用するのに非常に便利な立地だ。
ホテルの入口は煉瓦が所々に見え、古さと同時に歴史を感じる造りとなっている。 ヴァポレットのステーションから近くにあるが、Riva de Basioは乗降客の少ないステーションだ。そのため、ホテルの周辺はとても静かで人通りも少ない。
また、5分程歩けばスーパーマーケットのCoopがあり、飲食物を買いたい時に便利である。
外観とは異なり、ホテルの内部はカラフルでおしゃれな感じ
ホテル カ・ズスト・ベネチアは外観こそ古さを感じるものの、中に入ると現代的でおしゃれな感じのプチホテルである。
レセプション
レセプションは、それほど広くはないが、混み合うことはない。ここでヴァポレットの運航図が載っているヴェネツィアの地図がもらえるので、ぜひ手に入れておこう。頻繁にヴァポレットを利用する場合、結構重宝する。また、オペラや劇などを含むいろいろなパンフレットが用意されているので、興味があるならばレセプションの人に相談してみるのもいいだろう。
カ・ズスト・ベネチアのシングルルーム
このホテルの室内は、部屋によってデザインが異なるらしい。部屋に入った瞬間派手な印象を持ったが、慣れてくるとカラフルさが新鮮に感じる。また清潔感があるのがいい。
ベッドは可もなく不可もなくだが、大きさはに関してはやや小さ目かもしれない。 部屋には必要なものは一通りそろっている。デスクの下には冷蔵庫があり、ミニバーとなっている。奥にスーツケースを置くのにちょうどいいスペースがある。
バスルームはイタリアのホテルの標準よりは広めで使いやすい。トイレの周りのスペースも十分だ。狭いトイレは使いにくくて困る。バスタブはなくシャワーのみである。シャワールームはカーテンではなくガラス戸で仕切るタイプなので、バスルームが水浸しになる心配もない。
嬉しい充実した朝食
カ・ズスト・ベネチアの朝食はかなり充実している。ヨーロッパの中級以下のホテルではホットミールが付かないのが普通だが、ここではベーコンとスクランブルエッグが用意されている。暖かいものを食べると「食べたっ!」という気がするので嬉しい。
ハムは2種類用意されている。チーズもおいしい。この他にクロワッサン数種類、トースト、ジュースやフルーツもある。 カ・ズスト・ベネチアは、それ程大きなホテルではないが、この規模のホテルにしては満足のいく朝食をとることができるであろう。
カ・ズスト・ベネチア、唯一の欠点
カ・ズスト・ベネチアは、かなり気に入ったホテルだが、1つだけ欠点がある。それは、一部の部屋以外はwifiが使えないことである。基本的にwifiを利用できるのは1階(日本でいう2階)のみである。グランドフロアや2階に宿泊する場合wifiは利用できない。
wifiを使う場合は朝食に使用される部屋に行くことになる。この部屋は朝食時以外は宿泊者が自由にくつろげるようになっており、ここでwifiを使うのだ。夜、スマホで翌日の天気などを調べたい時に行くと、必ず誰かしら居たものだ。
部屋でwifiが使えないとはいえ、ホテルのスタッフもフレンドリーで、観光にも便利なホテルである。ヴェネツィアでは、かなりリーズナブルなホテルだ。またヴェネツィアに行く機会があれば、このホテルを利用したいと思う。
ヴェネツィアの魅力
1度は見たいヴェネツィアのカーニバルであるが、ヴェネツィアの魅力はカーニバルだけではない。ヴァポレットに乗り、運河沿いの歴史を感じる建物を見ているだけでも素晴らしい体験になる。
スペインで1つの場所しか行けないならトレドに行けと言われるが、イタリアの場合、トレドに相当するのがヴェネツィアだろう。ヴェネツィアは、イタリアの他の都市とはどこか違った空気を感じるのである。
イタリアに多少なりとも興味があるのなら、1度はヴェネツィアに行ってみることをおすすめする。
また、ヴェネツィア本島周辺の島については、下記の記事を参考に。