ざきログ

Zakki Log - つらつらと、気になることを綴ってみます -

リバプール訛りという美しい英語

イギリスはそれ程大きな国ではないが、地域によって言葉のアクセントがだいぶ異なる。そのため、高いレベルで標準的なイギリス英語を使いこなせても、地方へ行ったら聞き取れないこともある。

日本では標準語からかけ離れた方言が使われることもあるが、イギリスでは方言があるにしても、標準的な英語とは大きな違いはないだろうと思っていた。しかし、イギリスでも全く別の言語に聞こえるような方言があることに気付いた。

 

 

きっかけはスタジアムで歌われるチャントだった

地域による言語の違いを知るきっかけとなったのが、下記の記事でも書いたサッカースタジアムで歌われるチャントであった。よく聞いてみると英語ではNGワードの"f*cking"が、あるサポーターは「ファッキング」と言い、別のサポーターは「フォッキング」と言っているのである。

 

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そして、そのような発音の違いについてあれこれ調べている内に、イギリス内には大きく分けていくつかの方言があることが分かった。中でも特に気に入ったのがリバプール訛りの英語だ。

 

スカウスというリバプール訛りの英語

リバプール訛りの英語のことをスカウス(Scouse)という。スカウスを話す有名人の1人が、プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドに所属していたウェイン・ルーニーである。彼の話す英語は非常に聞き取り辛いようだ。

それでは、リバプール訛りの英語を話す女性の動画を見てみよう。  

 

 

かわいらしい19歳の女性である。最初に言ってるのは"book"のことである。彼女は「ブック」ではなく「ブッフ」のような発音をしている。

ドイツ語を勉強したことがある方なら、彼女の"book"の発音がドイツ語の"buch(本)"の発音のようになっているのが分かるであろう。

途中、インタビュアーが理解できず、アシスタントらしき人から助け舟をだされている。ネイティブでも全く理解できない訛りもあるようだ。

 

スカウスの特徴

次にYouTubeでスカウスのアクセントに関する動画があるので紹介したいと思う。リバプール出身のレベッカ(Rebecca)がスカウスの発音や言い回しを教えてくれる動画である。

日本語の字幕も表示できるので、是非見てほしい動画だ。

 

 

スカウスと標準英語の語彙の違い

動画の最初のパートでは、日常使用されるスカウスの語彙が標準英語とは違うことが下記のように説明されている。

Bizzies = Police

Kecks = Trousers

Made up = Really happy

Cob on = Bad Mood

Bevvy = Drink

Scran = Food

Bifters = Cigarettes

Geggin in = Being nosey

上記のように、リバプールで使う単語は標準の英語とかなり違うことが分かる。

 

スカウスと標準英語の発音の違い

次に発音の違いを説明している。スカウスの発音と標準英語の発音が大きく異なるものをいくつかあげてみたい。

kの発音:上記で説明したとおり、スカウスではドイツ語のような発音をする

come及びupの発音:スカウスでは"come"は「カム」ではなく「コム」と発音し、"up"は「アップ」ではなく「オップ」と発音する。したがって"Come up"は「コム・オップ」と言う。

thoughの発音:スカウスでは「ゾウ」ではなく「ドウ」と発音する

 

使用頻度の高い単語で特に注意が必要な発音

最後に、日常よく使われる単語で、かつ標準英語の発音の発音と大きく異なる、特に注意が必要な2つの単語を紹介している。

Something:スカウスでは「ソエン」と発音する

Nothing:スカウスでは「ノエン」と発音する

とても信じられない発音でびっくりする。

 

音的には標準英語よりはるかに美しいスカウス

標準英語を話すロンドンっ子にしてみれば、スカウスは聞き辛く、田舎臭い言葉かもしれない。しかし、スカウスのスラングについて話す女性の言葉を、純粋に音だけで判断したらどうだろう。標準の英語よりも音的には美しいと思わないだろうか?

言語の音という観点からすると英語は他のヨーロッパ のメジャーな言語と比べ、それ程綺麗ではない。また、スペイン語、あるいはフランス語やドイツ語よりも音的には特徴がない言語だ。

しかし、標準英語と違い、スカウスには何となく聞き入ってしまう魅力を感じる。彼女の説明を聞いてもスカウスのスラングについてはさっぱり分からないが、優しいメロディーを聞いてるような錯覚におちいる。それがスカウスの魅力なのかもしれない。