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【サッカー】チャントで学ぶ英語

サッカーの試合では、よくチャントが歌われる。チャントというのはサポーターが歌う応援歌である。プロ野球でも「かっ飛ばせ~、○○(選手の名前)」と応援するが、このような類のものである。

もちろん、日本のサッカーの試合でもチャントは歌われる。日本代表の試合でサポーターが「オーレー、オレーニィ~ッポン」と歌うのが聞こえるだろう。それがチャントである。

しかし、やはりチャントといえばヨーロッパ、中でもイングランドだろう。面白いチャントがたくさんある。英語で歌われるチャントを聞けば多少は英語の学習にも役立つかもしれない。これらのチャントはYouTubeで見ることができるが、面白いチャントをいくつか紹介してみたい。

 

UEFA EUROでのチャント

UEFA EUROは、"EURO"と呼ばれるヨーロッパの各国代表の選手権、UEFA European Football Championshipのことである。

2016年、フランスで開催されたEURO 2016で、スウェーデンとアイルランドのサポーターのチャントの応酬がこちらである。

 

 

まず、スウェーデンがお馴染みのペット・ショップ・ボーイズ(Pet Shop Boys)のゴー・ウェスト(Go West)のメロディーでアイルランドに向かい

 

Go home, to your ugly wives.

 

というチャントを歌う。日本語に訳すとひどいものであるが

「醜い嫁がいる家へ帰れ!」

といった感じだ。

 

続いてアイルランドが

 

You're shit, but your birds are fit.

 

とやり返す。"bird"はスラングで「女」を意味するが、主に男同士の会話で使う言葉なので、女性に対しては使わない方がいいかもしれない。"fit"は「かわいい」という意味。このチャントは

「お前ら(スウェーデンの男)は糞だが、(スウェーデンの)女はかわいいぜ!」

という意味だ。けなされているのか、ほめられているのか分からない微妙な感じが面白い。 

別の動画では「醜い嫁」と言われたアイルランドがスウェーデンに対し自虐的なチャントを歌っている。

 

 

Go home, to your sexy wives.

 

「セクシーな嫁がいる家へ帰れ!」 

スウェーデンに対する"You're shit, but your birds are fit."というチャントはイングランドサポーターも歌っており、ヨーロッパ内ではスウェーデンの女性はかわいい、あるいは美人だというコンセンサスがあるのかもしれない。

 

 

フーリガンの暴力ばかりが強調されるサッカーだが、大部分は寛容な態度でサッカーを楽しむ人たちである。

 

イングランドのプレミアリーグのチャント

イングランド・プレミアリーグのチャントは歌詞を表示している動画が多いので理解に役立つ。歌詞付きの動画を見るとチャントは面白いが、かなりきつい内容のチャントもある。また、チャントが作られた時のサッカー事情を知らないと内容を理解できない場合が多い。

おそらくプレミアリーグに関心がないイギリス人が下記のチャントを聞いても、言葉としては理解できても、何を言っているのかは分からないのではないかと思う。

 

 

この動画を見るとチャントは、下記のようにいくつかのパターンに分けられる。

  1. 選手などを対象とするチャント
  2. 相手のクラブやサポーターを対象とするチャント
  3. 自虐的なチャント
  4. 即興的なチャント

 

選手などを対象とするチャント

最も多いのが選手や監督などの現場の人たちを対象にするチャントである。このようなチャントの内容を理解するには、チャントの対象者がどのような人物かを分かっていなければならない。

上の動画の3:25から始まるチャントは

 

Your teeth are offside,

Your teeth are offside,

Luis Suárez,

Your teeth are offside!

 

「Luis Suárez(ルイス・スアレス)の歯はオフサイド」とはどういうことなのか見当もつかないだろう。そこで"Luis Suárez"をGoogleで画像検索すると、次のような写真が表示される。

 

f:id:a-priori:20180613001855j:plain

 

そう、ルイス・スアレスは出っ歯なのである。そのことをオフサイドと言っているのだ。何となく分かるだろう。

 

次に1:58から始まるチャントを見てみよう。

 

Paaark, Park

Wherever you may be

You eat dogs in your home country

Could be worse, you could be Scouse

Eating rats in your council house! 

 

これは韓国出身の朴主永(パク・チュヨン) 選手に対するチャントであるが、一見すると韓国の犬食を馬鹿にしているように思えるがそうではない。ちょうどこの頃、パク・チュヨンはリバプールへの移籍の噂があり、そのことについてのチャントである。

大体の意味は

「パクよ、お前の国では犬を食うが、まだましかもしれない。公営住宅でネズミを食うリバプール人になるよりは!」

といった感じである。Scouseはリバプール出身の人のことを指す。

 

相手のクラブやサポーターを対象とするチャント

4:23から始まるチャントは

 

The city is yours?

The city is youuuuurs?

20.000 empty seats!

Are you f*cking sure?

 

である。

これも背景を知らないと訳が分からない。前提として、この試合以前に行われたマンチェスターシティのホームゲームで、チケットが売れずに20,000席の空席ができてしまった。このことを揶揄しているチャントである。

ちなみにヨーロッパでは「20,000」の表記は「20.000」であり、カンマではなくピリオドを使う。

 

自虐的なチャント

0:22から始まるチャントは次のような歌詞である。

 

We lose every week

We lose every week

You're nothing special

We lose every week

 

応援するチームがなかなか勝てないのであろう。"You're nothing special"は選手やクラブ関係者へのメッセージかもしれない。「あんたらには普通のことかもしれないが、俺たちは毎週負けてるよ」みたいな感じだ。 

 

即興的なチャント

5:34から始まるチャントは面白い。

 

We want our dick back

We want our dick back

We want our dick back

We want our dick back

 

ゴール裏で男性器のかたちをした風船で遊んでいたサポーターが、風船を警備の人(スチュワート)に取り上げられてしまった。これに対しサポーターは「俺たちのポコチンを返してほしい」とチャントにしているのである。

おそらく、これはJリーグではアウトである。 

下記の5:19から始まる動画は、1人の観客がパイを食べているところをそのままチャントにしたものだ。

 

 

ある観客がパイを食べ始めたのを

 

He's eating pie

 

とチャントにし、パイのソースが足りなかったので、次に

 

Has he got some sauce?

 

というチャントを歌う。そして、他の観客がソースをくれたので

 

He's got some brown

 

とチャントにしている。

ここでは典型的なイギリス英語が使われている。「have got」というのは、アメリカ英語で「have」のことである。つまり、"Has he got some sauce?"は"Does he have some (any) sauce?"、"He's got some brown"は"He has some brown"を意味する。

前提として、スタジアムで売っている食べ物(スタ飯)は、ソースが足りないことがある。日本のスタ飯を想像すれば理解できるだろう。スタジアムでたこ焼きやお好み焼きなどが売っているが、少しソースが足りないことがあるのと同じである。そのため、イングランドでは自宅からソースを持ってスタジアムに行く人もいる。

たわいもないことをチャントにしているのだが、パイを食べている本人もノリノリで非常に面白い。

 

過去のチャントを検索できるサイト 

イングランドでは面白いチャント、あるいは素晴らしいチャントが歌われた場合、BBCなどのマスメディアに紹介されることもある。また、過去のチャントを検索できるサイトがこちらである。

 

terracechants.me.uk

 

YouTubeではいろいろなチャントの動画があるが、気になったものを上記のサイトで検索して概要をつかみ、どのような背景でチャントが歌われたのかを調べるとイングランド・プレミアリーグを見るのも一層楽しくなるだろう。そして、英語も学べるので一石二鳥である。